働けない、家賃が払えない…困ったときに使える制度②労災保険の給付

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働けない、家賃が払えない…困ったときに使える制度①傷病手当金

前回は業務外の病気・ケガで働けなくなったときに給付される傷病手当金について紹介しました。
では、業務中や通勤時の災害による病気・ケガにより働けなくなったときは、どのような制度が使えるでしょうか。

労働者災害補償保険法(労災法)では、業務中や通勤時に傷病した場合に補償される給付について定めています。
今回は、労災保険の給付のうち、病気・ケガで休業したときに利用できるものについて紹介します。

労災保険の給付対象になるのはどんなとき?

労災保険が補償するのは「業務上の事由又は通勤」による傷病です。
正社員だけではなく、パートタイム労働者、アルバイト、日雇労働者も適用されます。

業務災害

業務による災害であるかどうかを判断するには、まずそもそも「業務」とはどこからどこまでなのかを知っておく必要があります。

業務とは
①本来の業務(休憩中は業務中とは認められない)
②本来の業務に付随する業務

・業務の準備・後片付け作業(手洗い、着替え、機械の整備や準備など)
・生理的な行為(トイレ、水を飲むなど)
・反射的な行為(風に飛ばされた帽子を拾うなど)
・必要かつ合理的な行為(作業に必要なものを取りに行くなど)
・緊急の行為(人命救助など)

そして、もうひとつのポイントとして、「その業務をしていれば、誰であってもそのような災害にあったと考えられるか」が問われます。
業務に関係のない私的な行為が原因の場合や、個人的な恨みにより暴行を受けた場合などは認められません。

地震や落雷などの天災地変の場合も、原則業務上と認められません。
ただし、もともと事業場の立地条件や作業環境が天災地変の際に被災しやすい事情にあるときは、認められることがあります。

通勤災害

通勤中に転倒したり、交通事故にあったりした場合は通勤災害に該当します。
「通勤」に該当する移動は、次の3つがあります。

「通勤」とは
  1. 住居―就業場所間を往復するとき
  2. (複数の事業場で働く人の場合)就業場所から別の就業場所への移動
  3. (単身赴任している人の場合)赴任先の住居-帰省先の住居間の移動

ただし上記のどれもが、出勤・退勤または業務に伴う移動であることが必要です。
退勤途中で映画を観に行くなど、通勤を逸脱・中断した場合は、逸脱・中断している間とその後の移動は通勤になりません

3つの「傷病に関する保険給付」

病気やケガで働けない間は、生活費のほかに病院で治療を受けるお金もかかります。
労災保険には、傷病が治るまでの間、安心して治療と休養に専念できるようにするための3つの給付があります。

傷病が治るまでの給付
  1. 休業(補償)給付…所得保障(最大1年6ヶ月)
  2. 傷病(補償)年金…所得保障(1年6ヶ月経過後)
  3. 療養(補償)給付…治療など

働けない期間の所得保障「休業(補償)給付」

労働不能の期間は、休業(補償)給付が支給されます。
支給される額は、1日につき「給付基礎日額×60%」です。
通算3日の待機(※)後、4日目から支給されます。

※業務災害の場合は、待機の3日分は事業主が休業補償(60%)を行う義務があります。
通勤災害の場合は、この義務はありません。

傷病手当金と違い、半日だけ労働した場合なども支給されます。その場合、支給額は
「(給付基礎日額-労働により払われる賃金額)×60%」です。

1年6ヶ月経過しても傷病が治らないときは「傷病(補償)年金」

療養を開始して1年6ヶ月を経過しても傷病が治らず、障害の程度が傷病等級に該当する場合は、傷病(補償)年金を受けることができます。
傷病等級は第1級~第3級があり、1級が最も障害の重い状態です。
障害が重いほど、支給額が多くなります。

治療や入院は「療養(補償)給付」

業務災害・通勤災害による傷病が治るまでの治療を、無料で受けることができます。
退職後も受けることができます。

労災保険を取り扱う指定病院等で治療を受ける場合は、現物給付(そのまま無料で治療を受けられる)です。
それ以外の病院で治療する場合は、いったん窓口で全額負担をしたのち、現金給付で返還してもらいます。

申請はまず医療機関で相談

労災保険の給付を申請する際は、治療した医療機関で請求書を記入し、会社に提出します。
労災保険の場合は、労働基準監督署による審査があり、その災害が本当に労働災害に該当するかなどを判断されます。

労働災害に該当しない場合は、健康保険の制度などを申請することになり、給付内容も変わります。

労災があると解雇される?

労災があったからという理由では、会社は従業員を解雇することはできません。
労災保険の給付は、労働者の生活を守るためのものであり、保険料から払われるものです。
会社に遠慮して退職する必要もありません。

前回も書きましたが、退職を考えるのは治療してからでかまいません。
治療しなければ、次の仕事を探すこともできません。
まずは治療に専念することが大切です。

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