生活保護の基礎知識③申請すると家族に知られる?扶養義務者と扶養照会

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生活保護の基礎知識②生活保護の種類と内容は?

生活保護を申請すると家族に知られる?

「生活保護を申請すると、親や兄弟に連絡が行くので困る」
という相談をよく受けます。たしかに、親や兄弟から援助を受けられなくて困っているために生活保護を利用したい人にとって、福祉事務所から家族に連絡が行ったところで援助が受けられる可能性は低いでしょう。

それでは、なぜ福祉事務所は家族に連絡をするのでしょうか。

それは、民法上の扶養義務者ふようぎむしゃによる扶養が、生活保護に優先すると定められているからです。

生活保護法第4条第2項
民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。

扶養義務者とは?

扶養義務者には、絶対的扶養義務者ぜったいてきふようぎむしゃ相対的扶養義務者そうたいてきふようぎむしゃの2つがあります。

扶養義務者の種類
①絶対的扶養義務者→直系血族(親、子、祖父母、孫など)、兄弟姉妹、配偶者
②相対的扶養義務者→①以外の3親等以内の親族(おじ、おば、ひ孫など)
相対的扶養義務者については、すでに扶養の関係にあるか、扶養が必要な特別の事情と扶養能力がある場合に扶養義務を負います。

夫婦と、未成熟の子どもがいる親には強い扶養義務がある

①夫婦間および②未成熟の子のいる親には、生活保持義務せいかつほじぎむといって、自分の収入や資産を使って自分と同程度の生活を保障する義務があります。

それ以外の親族の義務は、生活扶助義務せいかつふじょぎむといい、自分の生活を維持してさらに余裕がある場合に、その範囲で援助する義務にとどまります。
成人した子どもが年老いた親を扶養するのはあくまで生活扶助義務なので、子どもに生活の余裕がなければ扶養する義務はありません。

扶養義務者への調査”扶養照会”とは

生活保護を申請すると、福祉事務所は申請者の扶養義務者に、申請者を扶養できないか調査します。これを扶養照会ふようしょうかいといいます。

どんなことを調査するの?

1.金銭的な援助(同居・仕送りなど)ができるかどうか
2.精神的な援助(何かあったときの訪問や電話など)ができるかどうか

を主に調査します。調査は福祉事務所から扶養義務者あてに書面が送られ、それに記入して返送してもらいます。

親族に扶養能力がない場合は?

親が年老いていて年金収入しかない、何年も音信不通、DVなどのトラブルがあった、親族も生活保護を受給しているなど、明らかに扶養が不可能な場合は調査を行わないことも多いようです。
調査を拒否したり事実を隠したりするよりも、正直に事情を話して適切な対応をお願いするほうが良いでしょう。

扶養照会のメリット

・もし仕送りがあった場合は、収入として認定し、保護費からその分を減額しなければなりません。不正受給を防ぐ役割があります。
・保護をもらっている人が入院したり亡くなったりした場合に、親族に連絡を取ってもらうことが可能です。

扶養照会のデメリット

・仕送りがあっても保護費からその分引かれるので、申請者も扶養義務者も収入面では特に助かることはないと思います。
・援助が見込めない理由や連絡をしてほしくない事情をきちんと言わない限りは、親や兄弟、配偶者に連絡が行く可能性が高いです。

扶養義務者がいるからという理由で、生活保護の申請をあきらめる必要はありません

扶養照会は、扶養義務者に同居や仕送りを強制させるためのものではありません。
「扶養義務者に扶養能力がなく、申請者が生活保護を利用せざるを得ない状況にあること」の確認のためにおこなっているものと考えれば良いでしょう。

「親や兄弟がいるから」というだけで、生活保護を申請できないわけではありません。
正直に援助を得られない事情を、福祉事務所に伝えるのがベターです。